新演出版ミュージカル『マリー・アントワネット(Marie Antoinette)』感想、フランス革命の光と影

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12月11日撮影【写真転載不可】画像はダウンロードできません。(知)


暖かかった日々が終わり、クリスマスを境に一気に冷え込んでまいりました。
これから年明けまで寒い日々が続くようです。

クリスマスツリーのうきうきした雰囲気が門松のピリっとした緊張感に変わり、年越しの用意をしなければと気持ちも自ずと引き締まってまいります。

年越しの準備をする前に、しなければならないことがございました。
それは、

『マリー・アントワネット』祭!!!

あの衝撃を”祭”言わずしてなんと申しましょう!!
この胸の思いを書かずして年は越せません。







マリー・アントワネット、観劇日のキャスト


マリー・アントワネット:笹本玲奈

マルグリット・アルノー:昆 夏美

フェルセン伯爵:古川雄大

ルイ16世:佐藤隆紀

マリー・テレーズ(子役):叶英奈

ルイ・シャルル(子役):寺崎柚空

レオナール:駒田 一

ローズ・ベルタン:彩吹真央

ジャック・エベール:坂元健児

ランバル公爵夫人:彩乃かなみ

オルレアン公:吉原光夫


ロアン大司教:中山 昇
ギヨタン博士:松澤重雄
ロベスピエール:青山航士
ラ・モット夫人:真記子

荒田至法
石川 剛
榎本成志
小原和彦
川口大地
杉山有大
谷口浩久
中西勝之
山本大貴
横沢健司
天野朋子
石原絵理
今込 楓
岩﨑亜希子
首藤萌美
堤 梨菜
遠山さやか
原 広実
舩山智香子
山中美奈
吉田萌美

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12月11日撮影【写真転載不可】画像はダウンロードできません。(知)


絡み合う2人のMA


舞台は、18世紀フランス。
『ベルサイユのばら』などでお馴染みのフランス革命前夜。

豪奢な生活を楽しむ王妃マリー・アントワネット(笹本玲奈)と上流階級の方々。
そして、美しきスウェーデン貴族フェルセン伯爵(古川雄大)
夢のように美しく煌びやかな舞踏会に突然飛び込んだマルグリット・アルノー(昆夏美)

2人のM・Aがクロスしたその時、もしかしたらフランス革命への歯車が動き出したのかもしれません。

フランス革命は、これまで良いもの、人の進歩の過程として描かれてきました。
特に、日本ではそうだったのではないでしょうか。
物語の中に”悲劇””悲恋”はあったとしても、これほどまでフランス革命における人間の悪意が描かれたミュージカルはなかったのではないでしょうか。

一幕で頂点にまで達した煌びやかさは、二幕で完膚なきまでに打ち砕かれます。
終演後は、おのずと「フランス革命とはいったいなんだったのか」と考えずにはいられませんでした。

演出はロバート・ヨハンソン、音楽は『エリザベート』シルヴェスター・リーヴァイ

華麗でドラマティックなリーヴァイが生み出した旋律に乗せ、『マリー・アントワネット』を一級のエンターテイメント作品に仕立て上げたヨハンソン氏の手腕はさすがでございました。

無邪気さと強さと




はい、上の動画でもわかります通り、笹本マリーの煌びやかさにもううっとりでございました。

笹本玲奈さんは、2006年『マリー・アントワネット』初演マルグリット・アルノーを演じられた方です。
これまで『ミス・サイゴン』のキム『レ・ミゼラブル』のエポニーヌと、どちらかといえば幸薄い女性を演じられてこられました。

2017年1月にご結婚、10月第1子をご出産され、復帰第1作がこの『マリー・アントワネット』です。

これがもう、もうですよ、素晴らしいマリーでございました。
特に2幕、母として毅然と振る舞う笹本マリーは凛とした強さを発揮。
1幕の無邪気な少女のようなマリーとは、打って変った気品に満ちておりました。

1幕では、古川フェルセンを前に、「うふ♪」「あはっ♪」「キャッキャッ」と無邪気に振る舞い、まるでおままごとを楽しむように庭園プチ・トリアノンに好きなものだけを集めたマリー

リボンにシルク、王子さまに庭園、女の子の夢をすべて実現しかのようなマリー、女の子なら誰もが憧れるマリー

しかし、そのすべてが無知の上に、民衆の苦しみの上に築かれたものだとしたらー

無知が罪だとするならば、王妃の無知は大罪なのかもしれません。
しかし、断頭台で非業の死を遂げねばならぬほどの大罪だったのでしょうか。

民衆を率いるマルグリット




『マリー・アントワネット』の中で、唯一架空の人物がマルグリット・アルノーです。

常に民衆の側につき、民衆を率いるジャンヌダルクのような存在ですが、民衆の悪意の象徴でもあります。
悪意というよりよりも、マルグリットが歌う「なぜ違うの なぜ♪」でもわかるように嫉妬心の象徴と言うべきでしょうか。

マルグリット・アルノーを演じたのは、映画『美女と野獣』のベルを好演した昆夏美さん。

ついこの間まで可愛いだけの方と思っていたのになんという変貌!!

サナギが蝶になったと言いましょうか、蝶というより精悍なハヤブサになったと申しましょうか。
可愛い女の子を演じる方はたくさんいらっしゃいますが、これほど強い女性、悪女とさえ言える女性を演じられる方はそう多くはありません。

かといって強すぎるわけではなく可愛さ、儚さもある。
今の日本のミュージカル界で稀有な存在なのではないでしょうか。

笹本マリーとの声の相性も良く、姉妹だと言われれば納得してしまう雰囲気がありました。

マリーが光ならマルグリットは影、どちらのMAに感情移入するかによって受取るものがかなり違ってまいります。
みなさまはどちらのMAに感情移入されましたか?

その方の名は、古川雄大


世間には「ミュージカルは突然歌いだすから変だ」との声があるそうですが、そんな声などなんのその始まってすぐに歌い出すのが古川フェルセン伯爵です。



1987年7月9日生れ、スラリと伸びた肢体、甘いマスクで乙女の心を揺らすそのお方は、舞台に出演される以前は東京ディズニーシーのステージにダンサーとして立たれていたそうでございます。

プライベートでは天然キャラとして有名ですが、そのノーブルな雰囲気は「もしや天皇陛下と同じ学習院をご卒業なのではありませんか?」と尋ねたくなるほど。

高貴な雰囲気を一身にまとい、これまで


ファントムの恋敵の伯爵や



悲運の皇太子とか



ロミオとか




「米なんて食えりゃあいいの」とか…

あ、間違えましたぁぁーー!


気を取り直しまして

フェリペ王子や



黒執事だったり




音楽家とか


もういっそエリザベス女王に貴族の称号を与えていただきたいくらいでございます。
それなのに舞台の合間にドラマに出られたりライブをされたりとすごく働き者。




舞台上に古川フェルセンが現れるともううっとり〜♪

ハートを
バキュンっっ!


とまるごと持って行かれてしまいます。

ディズニー映画でよく見かける手の甲への王子キスや優しげな眼差し。
その憂いを含んだ瞳でロックオン。

そしてキスは寸止めぇぇぇーー!!

古川フェルセンがいるだけで気分はもうマリー・アントワネット

自分が見つめられ抱きしめられているかのような心地になります。
たとえ、実際には傍聴席で編み物をしている女や河原で洗濯する女だったとしてもー

全国のMAファンの乙女のみなさまご注意くださいませ。
古川フェルセンをあまりに見つめすぎますと

溶けます(はあぁと)

王位を狙う危険な男





古川フェルセンに続きまして、

待たせたなお嬢さん方

といった感じで登場するのが吉原オルレアン公でございます。


吉原さんといえば、ここ数年

黄色い紙を破られていたり



手紙を書かれていたり


坊主頭が多かったように思います。

ところが、『マリー・アントワネット』では、そのイメージを吹っ飛ばすロングヘア
ビジュアル系ロックバンドのリーダーのようなカッコよさ!!

爆裂歌唱はそのまま
「私こそがふさわしい」など歌われたりしたら、老いも若きも男も女も「もうなんにも言えねえ」状態になってしまいます。

たとえ、地下の印刷所から地上に出ただけだったとしても決して突っ込んではならない雰囲気がございます。

笹本マリーは、「蛇を殺して」吉原オルレアンを蛇だと歌うのですが、これほど魅力的な蛇が他にいるでしょうか。

ミルトンの『失楽園』には、サタンが化身した蛇が登場いたします。
発表当時、イブを誘惑するサタンが「まるで貴婦人を誘惑する王侯貴族のようではないか」と揶揄されました。
批判者たちが想起する王侯貴族とは、もしかしたら吉原オルレアン公のような方だったのかもしれません。
もしそうであるならばイブが到底抗うことができなかったのも無理はございません。

はぁぁぁぁぁぁ・・・

それにしましても、

なぜ

なぜ

こんなにカッコ良いのでしょう。

そのドヤ顔にひれ伏したくなります。


劇中のドヤ顔とは違い、カーテンコールでの控えめなお手振りの可愛いこと


誰が蛇だったのか?





華やかな1幕から急転直下、きつく、しんどい2幕。

「自由・平等・博愛」の言葉がこれほど冷たく空疎に聞こえたことがあったでしょうか。
そして、考えさせられることの多い2幕でございました。

笹本マリー吉原オルレアンを蛇だと歌い、民衆は笹本マリーを蛇のような女だと言います。

民衆はマリーのことをよく知っていたわけではなく、新聞に書かれていたからそう思っただけ。
裁判でマルグリットが真実を叫んだとしても、熱狂した民衆は聞く耳を持ちません。
SNSが発達した現代でも、どこかで繰り広げられていそうなシチュエーションではありませんか。

「蛇を殺して」を歌う時マリーがまとうドレスの色は水色
カーテンコールのドレスも水色
これは演出家の指示だと聞きました。

宗教画で聖母マリアの無原罪の御宿りを描く場合、のローブを身にまとい罪の象徴であるを踏み砕くというお約束事がございます。
演出家が水色のドレスをマリーにまとわせたのは、罪はないのだと示したかったからなのでしょうか。
ただ、まったく罪がないのかと言われると考え込んでしまいます。

考えれば考えるほど堂々巡りを繰り返すばかり。
もしかしたら、私たちの心の中に潜む小さな蛇がはるか昔から今に至るまで時々顔をのぞかせては罪びとを作り続けているのかもしれません。

(知)




スタッフ


脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ

演出:ロバート・ヨハンソン
 
翻訳・訳詞:竜 真知子
音楽監督:甲斐正人
振付:ジェイミー・マクダニエル
演歌唱指導:林アキラ、やまぐちあきこ
美術:松井るみ
照明:高見和義
音響:山本浩一
衣裳:生澤美子
ヘアメイク:野沢幸雄、岡田智江(スタジオAD)
映像:奥 秀太郎
指揮:塩田明弘
オーケストラ:東宝ミュージック、ダットミュージック
音楽監督助手:中條純子、宇賀神典子
稽古ピアノ:國井雅美、石川花蓮
舞台監督:廣田 進
演出助手:末永陽一
制作助手:廣木由美
プロダクション・コーディネーター:小熊節子
プロデューサー:岡本義次、服部優希、田中利尚

宣伝美術:服部浩臣
宣伝写真:平岩享、田内峻平

ウィッグ製作技術協力:アデランス

製作:東宝

公演情報


福岡公演:博多座
日程:2018年9月14日(金)~9月30日(日)
公式サイト
https://www.hakataza.co.jp/lineup/201809/mary/index.php

東京公演:帝国劇場
日程:2018年10月8日(月・祝)~11月25日(日)
公式サイト
https://www.tohostage.com/ma/index.html

名古屋公演:御園座
日程:2018年12月10日(月)〜12月21日(金)
公式サイト
https://www.misonoza.co.jp/lineup/month12.html

大阪公演:梅田芸術劇場メインホール
日程:2019年1月1日(火・祝)〜1月15日(火)
公式サイト
http://www.umegei.com/ma2019/

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