ミュージカル『笑う男』感想、壮大な音楽で紡ぐユゴーの世界

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【写真転載不可】画像はダウンロードできません。(知)


長かった10連休も最終日となった5月6日(月・祝)、御園座公演千秋楽のミュージカル『笑う男』を観てまいりました。

『マタ・ハリ』を生み出したフランク・ワイルドホーン、ロバート・ヨハンソンコンビの新作、しかも原作者は『レ・ミゼラブル』『ノートルダム・ド・パリ』などで知られるヴィクトル・ユゴー

ユゴー自身「これ以上の作品はない」と言ったという『笑う男』のミュージカル化。
さらにさらに、浦井健治さんが主役のグウィンプレン、ウルシュスに山口祐一郎さん、ジョシアナ公爵に朝夏まなとさんが抜擢されときては、これはもう観ないわけにはいきません。







笑う男、観劇日のキャスト


グウィンプレン:浦井健治

ウルシュス:山口祐一郎


デア:夢咲ねね

ジョシアナ公爵:朝夏まなと

デヴィット・ディリー・ムーア卿:宮原浩暢(LE VELVETS)

フェドロ:石川禅

リトル・グウィンプレン:下之園嵐史


中山 昇 上野哲也 宇月 颯 清水彩花

榎本成志 小原和彦 仙名立宗 早川一矢
藤岡義樹 堀江慎也 森山大輔
石田佳名子 内田智子 岡本華奈 栗山絵美
コリ伽路 富田亜希 安田カナ 吉田萌美(男女50音順)

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5月6日撮影【写真転載不可】画像はダウンロードできません。(知)


魅力的なキャラクターたち


ミュージカル『笑う男』は、ヴィクトル・ユゴー原作のミュージカルです。
公式サイトに掲載されているストーリーの冒頭には、次の一文が掲げられています。

-金持ちの楽園は貧乏人の地獄によって作られるー

原作から抜粋されたこの一文は非常に重く感じられますが、実際の舞台はそこまで重い雰囲気は感じられずむしろ軽快で快活な感じさえ受けました。
それは、ひとえに出演者それぞれのキャラクターによるものでしょう。

前半に登場する下之園嵐史リトル・グウィンプレンは澄んだ声を響かせよくストーリーをリード、ウルシュスとの掛け合いもテンポよく将来が期待されます。

原作では、狼と一緒に暮らし、まるで「ツンデレを期待しているようだが私にはツンしかないのでデレは期待しないでくれ」とでも言っているような人嫌いのウルシュスですが…

山口ウルシュスときたら、デレの中のデレ、まるで甘いショートケーキにさらにグラニュー糖をまぶしたような甘さ。
リトル・グウィンプレンと幼いデアを追い返そうとするもののそんなことはできるはずもなく、最後に残ったパンまで差し出してしまう始末。

ものすごく良い人ではありませんかぁ。
漏れ聞こえてきた「まるでバルジャン」との評も納得の展開。

山口祐一郎さん自身の優しさがだだ漏れで、"残酷な世界"と歌っているのにそこに広がっているのは優しい世界。
「なんて愛らしい方なのだろう」と観ているこちらまでデレデレになってしまったのでした。

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5月6日撮影【写真転載不可】画像はダウンロードできません。(知)


浦井グウィンプレンはといえば、最下層の人々と暮らし、最下層の人々に笑いを提供するいわばピエロのはずなのですが、そこにいるだけで目で追ってしまうカッコ良さ。
純粋な愛と自分の容姿に対する葛藤との間で悩むグウィンプレンそのもの。
まっすぐな夢咲デアと一緒にいるから、そんなに素敵に見えるのでしょうか?

また、若者らしい将来への希望を表明する "世界を変える"から "目を開いて"、そしてタイトル曲の"笑う男" と怒涛のような展開の中で歌われる多彩なナンバーを見事に歌いきり実力を発揮。

ウルシュスと親子で歌う "幸せになる権利" は対決曲(親子けんか曲?)のはずなのに、聴いていて楽しいのはお二人の仲の良さがにじみ出ているからでしょう。
浦井グウィンプレン、王子さま服はもちろん素敵なのですが、断然ヴィンテージ風のコートのほうが素敵♡

特に、立ち姿が良い!
優雅で繊細な夢咲デアと一緒に立つと惚れ惚れしてしまうほど。
天使のようなデアが側にいることでより一層カッコよく見えるのです。

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5月6日撮影【写真転載不可】画像はダウンロードできません。(知)


立ち姿が良いといえば、朝夏ジョシアナ公爵
立ち居振る舞い、ドレスの裾さばき、ジョシアナとしての圧倒的なパワー、そこにいるだけで惹きつけられます。
さすが、元宙組トップスター
胸に熱い熱い思いを秘めたジョシアナ公爵として、そこに確かに存在しておりました。
ジョシアナ公爵なら、きっと男どもなど乗り越えて進んでいくことでしょう。
後で書きますが、とにかくドレスがどれも素敵でうっとりしてしまいました。
そのドレスを華麗に着こなす朝夏ジョシアナ公爵にまたうっとり。


デヴィット・ディリー・ムーア卿フェドロも一癖もふた癖もありそうな、とても魅力的な人物でしたが、いかんせん時間と空間が限られる舞台ではさらりとした扱い。
少し物足りなさもー
ダメ男の宮原デヴィット・ディリー・ムーア卿と嫉妬と憎悪に満ちた狡猾な召使い石川フェドロ、どちらもかなり深掘りできそうな人物なのですが、それはまた別のお話といったところでしょうか。
どちらもアナザーストーリーが観たくなる魅力的なキャラクターでした。

石川フェドロさまは、ただ今 Twitter で瓶の開封官としてご活躍です。



個性あふれるユニークなウルシュス一座の面々にもきっとそれぞれに興味深い物語があるのでしょう。

ワイルドホーンらしい壮大なナンバーとともに、全編に流れる哀愁を含んだバイオリンの旋律は没入感を高めてくれ耳も目も楽しませてくれる作品でした。

豪華なセットと衣装


『笑う男』で特筆すべきは、セットと衣装の豪華さです。

『笑う男』のセットは、韓国版のセットを縮小して使われています。
韓国初演時、ワールドツアーを念頭に置き開発されたセットは、劇場に合わせて可変可能になっています。
世界を表す円形のセットやガーデンパーティー、貴族院のセットも初演時そのまま。
ただ、舞台の幅が狭いためグウィンプレンの口を模した赤いラインがただのラインに見えてしまうのは残念でした。
それと、一座の女性陣が歌う大好きな "涙は流して" のシーン、韓国版で使われた水盤がないのは寂しいですね。
ぜひ日本でも宇月颯さんや清水彩花さんなど女性陣がワイワイキャッキャと水を跳ね上げながら歌う "涙は流して" を観てみたいです。


衣装は日本版のために作られたものです。
舞台衣装デザイナーの前田文子さんがデザインし、一針一針丁寧に、糸一本にも心を込めて作られた衣装の数々は、まるで17世紀当時の英国を思わせるような豪華さ。
その豪奢なドレスにより『笑う男』の世界がより一層素晴らしく感じられたのは言うまでもありません。
前田文子さんの作り出す衣装は世界一なのではないでしょうか。



日本初演に向け練られたストーリー


原作の『笑う男』はヴィクトル・ユゴーの作品としては短いものの上下巻に渡る長編です。
そのすべてを取り込もうとするあまり、韓国版ではテーマが散漫なイメージを受けました。

それを演出の上田一豪さんが絞り込んだことで、副題「The Eternal Love -永遠の愛-」の通り一編のラブストーリーになっていました。
欲を言えばもう一波乱欲しいところでしたが、契約の関係上大きな改変は難しいのでしょう。

また、グウィンプレンの貴種流離譚といった趣も。
貴種流離譚とは、高貴な血筋の尊い方が何かの理由で恵まれない境遇に陥るが、流浪や冒険の中で次第にその力を発揮、正義をなすという物語です。

「より“人”にフォーカス」するという演出・上田一豪さんの言葉通りの仕上がりでありました。


最後に一言ー

ウルシュスさん、あなた自分は「泣かない男」だとおっしゃたではありませんか。
こんなに観客を泣かせるなんてなんて方、もうラストのウルシュスが可哀そうで可哀そうで…

公演も残すは北九州公演のみとなりました。
宮廷のみなさま、ウルシュス一座のみなさま、あと3公演思う存分楽しんでくださいませ。

(知)


■北九州公演
日程:2019年5月25日(土)・26日(日)
会場:アルモニーサンク北九州ソレイユホール
(福岡県北九州市小倉北区大手町12-3)

・5月25日(土)12:00/17:00
・5月26日(日)12:00

チケット:S席 ¥13,000、A席 ¥9,800、B席 ¥5,400(全席指定・税込)
一般発売:2019年3月2日(土) 10:00

お問合せ:Tel.092-985-8955(平日10:00〜18:00)
詳細:https://www.impresario-ent.co.jp/stage/warauotoko/

■韓国再演
日程:2020年1月
会場:芸術の殿堂
日本版をベースに構成を練りさらに素晴らしい姿をお見せする予定とのこと

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撮影(知)【写真転載不可】画像はダウンロードできません。


クリエイティブ・スタッフ


脚本:ロバート・ヨハンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
歌詞:ジャック・マーフィー
翻訳・訳詞・演出:上田一豪

音楽スーパーヴァイザー:塩田明弘
音楽監督:小澤時史
歌唱指導:山口正義 やまぐちあきこ
振付:新海絵理子 スズキ拓朗
美術:オ・ピリョン
照明:笠原俊幸
音響:山本浩一
衣裳:前田文子
ヘアメイク:岡田智江(スタジオAD)
映像:奥秀太郎
舞台監督:廣田 進 三宅崇司
演出助手:森田香菜子
オーケストラ:東宝ミュージック ダット・ミュージック
稽古ピアノ:國井雅美 中條純子
制作:江尻礼次朗
プロデューサー:服部優希 塚田淳一

製作:東宝

『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』公式サイト:https://www.tohostage.com/warauotoko/index.html

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